札幌光星中学校・札幌光星高等学校

校長メッセージ

自ら社会を照らす「光」となり 平和で豊かな未来を創るリーダーを育成

校長 駒井 健一郎

 情報化やグローバル化などの社会の大きな変革の中で、突如として発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる世界規模での危機、ウクライナの悲劇で露わとなったナショナリズムの正当性を根拠とする地域紛争や民族紛争から、われわれは多くの教訓を学び取らなければなりません。この先のベクトルは、世界が連帯し、持続可能な社会を作ることに向かわなければなりませんし、わが国もその一員としての役割を果たさなければならない時代を迎えています。
 コロナ禍に翻弄され続けた想像を絶するこの3年間を振り返った際、「心の目」でしっかりと観察し、勇気をもって判断しなければならないことがたくさんありました。私たちは、目に見えるものこそがすべてだと考えてしまいがちですが、喜怒哀楽や悩み事は、目に見えないものの中から生まれ、「心の目」を開いていないと大切なものを見過ごしてしまいます。肝心なこと、一番大切なことは、「心の目」でなければ見えないものです。この先、「コロナ世代」という言葉が生まれるかどうかわかりませんが、もし、そういった言葉が流布した時には、ポジティブなイメージの言葉であってほしいと願います。多感な思春期をコロナと共に過ごした10代の若者が、物事の多くを「心の目」で見ることができる、思慮深く、温かく、自らを差し出すことを惜しまない、「人」と「真心」に根ざした未来を築く、そんな世代の総称であってほしいと願います。
 創立から90年近くが経とうとしている本校が、カトリックミッションスクールとして大切に伝えてきた「他者のために自らを尽くすことができる人材の育成」という教育方針は、「心の目」を開くことへの自己との対峙の追及であり、不透明な未来をたくましく生きるための大きな力になるはずです。
 本校での学びを通し、見えないもの、見えにくいもの、急に見えてくるもの、未知なるものを「心の目」で観察し、それらに勇気をもって挑戦し、世界中が笑顔であふれる、無条件に平和な、そしてすべての被造物への尊厳にあふれる持続可能な未来を築くための一員として、大きく貢献する人物へと成長することを願います。

令和5年度 始業式(2023年4月10日)

 みなさん、おはようございます。
 本日より令和5年度の学校生活がスタートいたします。一昨日の中学校入学式で101名、高校入学式で372名の新しい仲間を迎え入れることができました。あらためて、入学おめでとうございます。先輩、先生、その他たくさんの学園で働く方々は、心より皆さんのことを歓迎します。まだまだ馴れない新生活で不安に感じることも多いと思いますが、私たち光星ファミリーは、みなさんのことを全力でサポートします。ぜひ、頼りにしてください。
 今朝も校門の前で皆さんと元気な挨拶を交わすことができました。今日一日を活き活きと生活するためのパワーを受け取ることができました。今年度もこの学園に関わるすべての方々が、毎日、笑顔で挨拶を交わし、この空間を愛してくれたら最高です。そんな信頼と安心の場を今年度もみなさんと一緒に作っていきたいと思います。
 先月の終業式の際にも先輩たちの大学合格実績について紹介しました。その後も吉報は続き、国公立大学合格は150名(うち現役124名)、京都大学をはじめ、大阪大学、一橋大学、東京工業大学、東北大学そして北海道大学などの難関を突破してくれました。私立大学にも早慶上理22名、MARCH(明治、青山学院、中央、立教、法政)38名の実績を残しました。3月に卒業した先輩たちは、293名と例年に比べ、在籍数の少ない学年でしたが、国公立クラスに在籍した先輩のうち、54%の先輩が現役で国公立大学合格を果たしました。最後まで粘り強くチャレンジした先輩たちは、本当に立派でした。振り返るとコロナの始まりからコロナの終わりまでの高校3年間だった先輩たちでしたが、与えられた環境に心から感謝し、仲間との連帯を大切にし、自分たちのベストを尽くし、大きな背中で後輩のみなさんを力強くけん引してくれた先輩たちでもありました。こういった先輩たちの姿勢こそが、本校の校訓である「地の塩 世の光」の意味するところです。自らの才能に気付き、その才能を磨き上げ、あなたの才能を必要とする人のために惜しみなくあたえ、平和な社会を作るための一員となるという「光星プライド」を、是非みなさんも引き継いでください。
 ところで、キリスト教の各教会では、昨日復活祭をお祝いしました。札幌光星中学校高等学校もカトリックミッションスクールですから、学校の年間行事予定を見ると、「聖木曜日」、「聖金曜日」、「聖土曜日」、そして「復活の主日」という記載があります。今年は春休み期間中でしたので、みなさんの多くは、あまり意識することはなかったかもしれませんが、復活祭は、十字架に架けられて亡くなったイエス・キリストが、3日後に復活したことを祝う日で、キリスト教徒にとってクリスマスとならぶ大切な行事です。復活祭のことを英語では「イースター」と言います。復活祭は毎年「春分の日から数えて最初の満月の次の日曜日」と決められており、今年は昨日でした。ちなみに来年は3月31日になります。キリスト教の信者が多い欧米の国々では、復活祭にはイースター・エッグと呼ばれるカラフルに装飾された卵やウサギの形をしたチョコレートなどを用意し、家族が揃ってパーティーを開き、お祝いをします。
 今年の復活祭を迎えるにあたり、ローマ教皇フランシスコは、先週水曜日の一般謁見で世界中の人々に向けてこのようなお話をされました。

 イエスは十字架につけられ、町の外の処刑地で、残酷で屈辱的な方法で殺されました。それは誰の目にも明らかな敗北、これ以上はあり得ない最悪の結末でした。見せつけられてしまった弟子たちの失望は、今日の私たちにも無縁ではありません。私たちの心にも暗い考えや挫折感が立ち込めることがあります。なぜ人々はこれほどまでに神に無関心なのでしょうか。なぜ世界には多くの悪がはびこっているのでしょうか。なぜ不平等は広がり続け、熱望される平和は訪れないのでしょうか。
 マタイによる福音書 第27章35節に「彼らはイエスを十字架につけると、くじを引いてその服を分け合った」とあるように、イエスは、死の間際にすべてをはぎ取られました。すべてを持っておられるはずの神の子が、何もかもを取られるがままになってしまいました。しかし、その辱めは、贖いへの道だったのです。
 真理を明らかにするために裸となることは、私たちには難しいことです。私たちは見せかけのもので装い、仮面をつけ、本来の自分より良く見せようとします。しかし、見せかけのものから、私たちが真の平和を得ることはありません。すべてをはぎ取られたイエスの姿は、自分についての真実をはっきりさせ、二面性を取り去り、見せかけの自分との慣れ切った共存から解放されることによって、真の希望が再び生まれることを、私たちに気付かせてくれます。必要なのは、希望の代替にすぎない多くの無用なもの、見せかけものを脱ぎ捨て、自分の心に、本質に、簡素でシンプルな生活やものの考え方に、立ち返ることです。
 人生の傷は、大きいか小さいかの問題ではありません。その傷をどう扱うかが問題なのです。その傷が怒りや悲しみの中で広がるがままにしておくのか、それとも、それを十字架上のイエスの傷と合わせることで、あるがままの自分をさらけ出し、傷は必ず癒されるということを信じて身を任せるのか。自分の傷だけを思い泣くのではなく、他者の涙をぬぐってあげる時、自分のための愛に渇くのではなく、わたしたちを必要とする人の渇きをいやしてあげる時、わたしたちの傷は希望の源となることもあるでしょう。なぜなら、自分のことだけを考えるのをやめた時にこそ、自分を取り戻すことができるからです。

 1年生と4年生は、この学校での新生活が始まり、小学校や中学校の自分から新しい自分に挑戦するチャンスという点で、また、2、3、5、6年生にとっても進級し、クラスや担任の先生が変わり、新たな気持ちで新年度をスタートするという点で、4月になると一人ひとりにとって「復活の機会があたえられる」とも考えられます。もちろん、昨年度までの悩みを払拭しきれていない人もいるでしょう。慣れない環境に不安を抱えている人もいるでしょう。我々は変化に対して少なからずストレスを覚えますし、どちらかというと環境の変化を望まない傾向にあるのも確かです。しかし、変化は成長のチャンスでもあり、また、この先の長い人生をイメージした際に、変化に強い自分を徐々に作ることも大切な作業のはずです。自分自身の生き様や魂といったものが、簡単に揺らぐことのないよう、偽りの自分や取り繕いの自分を脱ぎ捨て、あるがままの自分、真実の自分を新しい環境に委ねてみませんか。一人ひとりに与えられた課題に対し、堅実に冷静に取り組んでいきませんか。光星での学びを通し、ぶれない、骨太の自分作りをしてください。もちろん、そのために必要な忍耐もあるでしょう。しかしそれを支える温かな何かが、札幌光星には溢れています。仲間を、先生を、そして、光星ファミリーを信頼し、皆さんのベストを尽くしてください。新年度を始めるにあたり、皆さんへの心からのエールを込め、私からの挨拶とします。

令和5年度 高校入学式 式辞(2023年4月8日)

 大きな可能性に瞳を輝かせ、この先の自らの学びへの強い意志をもち、この場に臨まれた6カ年コース83名、マリスコース268名、ステラコース21名、合計372名のみなさん、今お名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星高等学校へのご入学、誠におめでとうございます。本日ご来賓のPTA会長駒木宏光様とともに、この良き日を心よりお祝い申し上げます。また、これまでみなさんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 本校は1934年の創立から数え、今年の11月で89年の歴史を迎え、皆さんは89期生となります。本校は、これまでに3万名を超える多くの優秀な人財を輩出してきました。本校の歴史は、まさしく先輩方が築き上げた財産の積み重ねによるものです。皆さんも歴史と伝統ある札幌光星高校の生徒として、その名に恥じぬよう、責任と自覚をもって行動してほしいと思います。
 3年以上にわたる新型コロナウイルス感染症によるパンデミックからようやく解放され、今日もこうしてマスクなしで、また保護者の皆様の入場制限もなく、晴れの日を迎えられることに大きな喜びを感じながら、入学式を行っています。もちろん、みなさんの中学校生活3年間がちょうどコロナの始まりから、その終わりまで続いたという事実を簡単に忘れ去ることは出来ません。学校祭や修学旅行をはじめとした行事、仲間とともに切磋琢磨した部活動など、様々な貴重な青春の場面を十分に全うできず、多くの困難を強いられてきたことでしょう。この3年の損失は簡単には埋められません。しかし、過ぎ去ってしまったことを悔いている時間が私たちにはありませんし、それでも前を向いて歩き続けなければならないのであれば、自分の身に起こったこと、降りかかったことを糧にし、すべては自分の成長のために用意されていたものであったのだと咀嚼し、体の隅々まで未来を生き抜くためのエネルギーとして送り込む、そんな「たくましく、しなやかに」生き抜く気概を、みなさんには持ってほしいです。
 先日、4年前に本校を卒業した方から、大学卒業の報告のお手紙を受け取りました。ここで、その一部を紹介します。

 駒井先生

 久しくご無沙汰を致しております。
 先生もお変わりなくお元気でしょうか。
 おかげさまでこの度、大学を卒業致しました。
 駒井先生には大学の進路の際大変お世話になり、感謝しております。
 大学での4年間では沢山の経験をすることができ、多くの学びがありました。
 あの時、大学進学を選択して本当に良かったと思っています。ご助力下さり、ありがとうございました。
 また、大学在学中も先生のもとで過ごした高校時代を思い出し、高校時代の経験がいつも私の中で大きな軸となっていました。
 社会人になっても挑戦心と感謝の気持ちを忘れず、日々努めて参りたいと思います。
 卒業後は就職し、ゴルフも大会に出たりしながら続けていきます。
 北海道はまだ寒い時期が続き、先生もお忙しい日々をお過ごしのことかと存じますが、どうかお身体に気をつけて下さい。

 今紹介した卒業生にとっても、大志を抱いて進学した東京での学生生活が、コロナによってイメージ通りにはいかず、オンライン講義に置き換えられたり、またプロゴルファーを目指して限界まで挑戦しようとしていた様々な計画もことごとく崩れるなど、たくさんの我慢を強いられたことでしょう。それでもこうして、社会人としての門出に際し、しっかりと支えてくれた方々への感謝を伝えられる大人に成長した態度に、そしてこの方に札幌光星での学びが深く根付いていることに、私は、感動し、大きな充実感に満たされ、心からこの方の門出を祝福しました。
 自分の身に降りかかった出来事、そのことを「運命」というのかもしれませんが、私たちは、未来を予知できない以上、どこかで自分の「運命」を受け入れなければなりません。この卒業生も、もちろん、みなさんも、みなさんのお父さんやお母さんも、そして私も世界中の人々も、みんなコロナを受け入れるしかありませんでした。程度の差こそあれ、みんなコロナに人生を狂わされました。しかし、予想だにしなかったからこそ見ることができた景色もありましたし、感じることができた情動もありました。そしてもしもコロナがなかったら、自分自身や他人の人生について、こんなにも真剣に考えたかどうかわからなかったとも思います。経験から学び、よりよく歩む方法を創造する姿勢が大切です。仮にコロナのせいで人生が滅茶苦茶にされたとしても、それでも前に向かって歩かなければならない私たちは、コロナを通し、何があっても何ができるのかを探求する姿勢を持ち、勇気をもって未来を切り開く、「たくましく、しなやかに」生き抜く術を身に着けていかなければなりません。
 みなさんの中には、15の春がイメージ通りにいかなかった方もいると思います。しかし、私たちは、前を向き、歩いていくことしかできません。今日からは、運命を受け入れ、いかなる運命にも意味があるはずであると洞察し、運命が自分を成長させてくれることに感謝できる人になれるよう札幌光星でベストを尽くしてください。心を開き、本校での学びを通し、自分自身の夢や目標を見定め、その実現のために多くのチャレンジをしてください。この学校には、お互いを大切に思う仲間がたくさんいますし、いつも明るく挨拶を交わし、優しい心で支え合い、成功を願い、応援し合う雰囲気があふれています。安心して学校生活を送ることができる日々を支えてくれるたくさんの先生方、先輩、そして、今日、共に新生活を始める372名の仲間がいます。みなさんは3年後に札幌光星ファミリーであったことを誇りに思い、希望の進路へと羽ばたいていくことでしょう。あたえられた環境の中でベストを尽くし、弛まぬ努力を続け、自分にあたえられた才能を丁寧に磨き上げ、多くの人の助けとなる人間になってください。これこそ本校の教育方針と理念です。本校の校訓「地の塩 世の光」とは、キリストが人々に示した理想的な人間像を、一人ひとりの生徒の中に実現することを目標としています。その理想的な人間像とは、「人にしてもらいたいと思うことを人にもしなさい」という聖書の教えの通り、自分自身の優位性をひけらかすことなく、自分の持てる力や才能を、それを必要とするすべての方に惜しむことなく差し出すこと、世界が平和になるよう、自分自身の持ち場でベストを尽くし、社会に貢献できる大人へと成長しなさいということです。札幌光星は、常にそのような姿勢をみなさんに求めます。本校での学びを通し、そのように生きることの尊さを知り、弛まぬ努力を続けられる姿勢を身に着けてください。他者との関わりによってしか、自分の幸福の実現に至る道が開かれないことを知り、他者のために尽くすことを歓びとする人になってください。札幌光星は、みなさんがその理想を実現するために心を込めてサポートしてまいります。
 保護者の皆様、御子息、御息女の本校への御入学に御理解をいただき、心から感謝申し上げます。環境が大きく変わり、何かと御心配なことも多いかと思います。担任をはじめ、学園が一致団結してサポートしてまいります。学校は楽しいところです。どうぞ安心して学校に送り出してください。これから3年間の御支援と御協力をお願いいたします。
 新入生のみなさん、これからの3年間、自らの健康を大切にし、体と心を鍛え、しっかりと勉学に励んでください。新たな友人と出会い、語らい、生涯の友を数多く作ってください。みなさんが3年後に有終の美を飾り、次のステージへと羽ばたいていくことを心より期待しています。

令和5年度 中学校入学式 式辞(2023年4月8日)

 大きな可能性に瞳を輝かせ、この場に臨まれた101名のみなさん、今、名前が呼ばれ、入学が許可されました。札幌光星中学校への御入学、誠におめでとうございます。皆さんの入学を心より歓迎いたします。本日ご来賓の父母の会会長伊藤隆人様とともに、この良き日をお祝い申し上げます。また、これまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 みなさんは、1月10日に行われた本校の入学試験に、たくさんの時間と努力で挑戦し、優秀な成績をおさめて合格しました。何度も話しましたが、札幌光星中学校は、受験をすれば誰でも合格するような学校ではありません。しっかりと合格へ向けて努力し、実力をつけた受験生だけが合格を勝ち取る学校です。自信をもって、堂々と新生活を始めてください。そして何より大切なことは、元気であることです。毎日を明るく楽しく過ごすことです。心と体を鍛え、勉学に思う存分に励んでください。そして、新たな友人と出会い、友情を深め、様々な可能性に目をむけ、力いっぱい活躍してください。札幌光星の先生方は、皆さんの成長のために必要なサポートをしっかりと行うことをお約束します。
 新入生のみなさんは、札幌光星での新生活の中で、特に何を楽しみに入学したでしょうか。教科書を使わない光星独自の探求的学びであるルクスプログラムでしょうか。フレンドシップミーティングやサマースクールなどの宿泊行事でしょうか。運動系や文化系の中から自分が興味のある活動に取り組むことができるサークル活動でしょうか。学校祭やスポーツデイ、遠足や芸術文化発表会などの行事でしょうか。それともたくさんの英語体験や異文化交流ができるイングリッシュキャンプや海外研修旅行でしょうか。すべて楽しみにしていて大丈夫です。新年度になり、わが国もこの3年間に渡るコロナ禍による制約の日々から一区切りをつけ、ようやく以前のように学校での活動を行っていくことができるようになりました。もちろんすべてがコロナ以前に戻るということではありません。例えば、マスクの着用も個人の判断になりますので、これからは、つける人とつけない人が混在するような街の様子になっていくのでしょう。それでも、出来なかったことが少しずつ出来るようになることに大きな喜びを感じながら、与えられた環境で一人ひとりがベストを尽くしてほしいと思います。
 札幌光星中学校では、先月初めに日本よりも一足先にアフターコロナに舵を切ったオーストラリアに3年生全員で8日間の研修旅行に行ってきました。本来の計画では、イギリスやイタリアへの研修旅行を予定していましたが、もう1年以上続いているウクライナでの悲劇の影響があり、行き先を安全に渡航することができるオーストラリアに変更しました。海外への研修旅行が4年ぶりでしたので、1年前の準備からいくつも不安なことがありましたが、終わってみると全員がすべての行程を元気にこなし、貴重な経験をたくさんして帰国することができました。赤道に近いケアンズという街では、日本では見ることができない熱帯雨林、そして夕暮れ時のスコール、世界最大のサンゴ礁エリアのグレートバリアリーフの環境保全への取り組み、先住民族アボリジニーの伝統や文化の保護などについて体験してきました。オーストラリア最大の街シドニーでは、多民族国家の中で活躍する日本人女性弁護士の方のお話を聞いたり、現地大学生との半日以上にわたるオールイングリッシュでのグループ自主研修で街中を散策したり、さらには観光資源と環境保全のためにビーチクリーニングにもチャレンジしました。真夏のオーストラリアは、連日30度を超え、札幌との気温差にも驚かされましたが、陽気で親切なオージーの方々の心温まるサポートに支えられ、みなさんの先輩の多くが、世界へと羽ばたくことの素晴らしさを実感しました。
 これは単なる海外旅行なのではありません。中学校での3年間のすべての学びが、凝縮し、渡航先での体験に深い味つけをし、心に刻まれる得難い経験へと導いていくのです。一つひとつの学びが連動し、大きな財産を築く支えとなることを、みなさんは、今日この瞬間から意識し、日々の学校生活を大切に送ってください。そして、そのような日々の努力は、その先の大学進学という大きな目標に向かってチャレンジする力を着実に備えていくのです。この春に卒業したみなさんの先輩方も、6年間を通し、少しずつ札幌光星の生徒としてのプライドを身に着け、自らが希求する将来をしっかりとイメージし、夢を叶えるに相応しい進路へと向かうため、勇気をもってチャレンジしました。そして京都大学、大阪大学、一橋大学、東京工業大学、北海道大学などの難関大学に現役での合格を果たしました。ただ、誤解してほしくないことがあります。それは、努力をし、目標である大学に合格することは素晴らしいことなのですが、それ以上に大切なことや見失ってはいけないことがあるということです。長い人生を歩んでいく上で、人として大切なことが何かを「知ること」、そして大切なことのためにブレることなく「行動すること」、さらには大切なことへの自分の解釈が間違っていないかを誠実に周囲の人から「聞くこと」や「アドバイスとして受け取ること」なのです。あなたの人生は、あなただけのものではありません。あなたとあなたと関わる世界中の方々の幸せのためにあなたの人生が大切に豊かに扱われなければなりません。一つ一つステップを踏んで、多くの人の幸せのために働ける人になってください。
 本日入学されたみなさんには、本校での6年間の中で、他者のために生きる喜びを本当の喜びとすることができるよう、知的にも人間的にも大きく成長することを期待します。本校の校訓「地の塩 世の光」とは、キリストが人々に示した理想的な人間像を、一人ひとりの生徒の中に実現することを目標としています。その理想的な人間像とは、他者との関わりによってしか実現されず、その関わりが、自分の幸福の実現に至る唯一の道であると考えています。本校は、生徒がその理想を実現するために心を込めてサポートしてまいります。
 保護者の皆様、御子息、御息女の本校への御入学に御理解、御協力をいただき、心から感謝申し上げます。環境が大きく変わり、まだ12歳のお子様を遠くの学校に通わせること、あるいは親元から離し、寮生活をスタートさせること、何かと御心配なことも多いかと思います。担任副担任をはじめ、学園が一致団結してサポートしてまいります。本校は「学校は楽しいところ」をモットーとしております。どうぞ安心してお子様を送り出してください。多くの仲間との関わりの中で、人間味豊かに成長していく姿を毎日楽しみに送り出してください。これから6年間の御支援と御協力を重ねてお願いいたします。
 新入生のみなさん。みなさんが6年後に有終の美を飾り、次のステージへと羽ばたいていくことを心より期待しております。

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